No.11 種類・特徴から材質・用途までわかる樹木と木材の図鑑
日本の文化は木の文化と言われています。私は仕事で樹木を扱いますが、木材の性質やその利用価値などは深く考えたことはありませんでした。
昔の人たちは、それぞれの木の特徴を活かして様々なものを作ってきました。
キリの箪笥、ツゲの櫛、ヒノキのお風呂、イチョウのまな板、
クロモジは高級つま楊枝、アオダモは野球のバットに使われます。
先人たちは、樹木に関する科学的な情報などもちろん知らなかったはずです。
ですが、樹木(とくに木材)に関する高度な知識と加工技術を、経験的に蓄積していたのです。
ところで、現代の一般的な造園業者さんは庭木や緑化木については詳しいのですが、
木材や加工のことに関しては、あまり詳しくないのが現状ではないでしょうか。
かくいう私も造園業者なので、木材や加工については詳しくないのが現状です。
それでも、作業で木に登ることがあるので、木材の特性を実感することはよくあります。
クスノキやカキノキの枝は折れやすい。
カシノキの枝は切ってみると堅い、幹は重い。
イチョウの枝は柔らかいけれど、意外と丈夫。
などなど。
造園分野に限定すれば、木材の知識は必要ないという人もいるかもしれません。
ですが私の場合、幸か不幸か、樹木を幅広く知りたいという好奇心は尽きませんでした。
ある樹木の木材の性質を知ることで、その樹木の理解が深まることがあるからです。
例えば、ある樹木の材の特徴が、その樹木の名前の由来に影響している場合がみられます。
「カマツカ」というバラ科の樹木があります。林の中ではあまり目立たない木です。
カマツカの材はとても強靭で、細くても折れにくい。
鎌(かま)の柄(つか)に使える木だから、カマツカなんですね。
また、「オノオレカンバ」というカバノキ科の樹木があります。
この木は、斧が折れてしまうくらい硬い樺の木、というのが名前の由来になっています。
さて、この本を購入してしまったからには、
樹木の世界にもう一歩深く踏み込んでみようと思います。
この本の紹介者: 樹木医 太田勝也