有限会社太田造園

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☆ツゲの樹勢回復  blog number. 51

こんにちは、太田勝也です。

 

さて、今回のブログでは2年前に実施したツゲの樹勢回復業務の様子を紹介します!

今年で、実施後2年になるので、経過観察の年でした。

ちなみに現場は個人のお庭なので、民間のお仕事になります。

さっそくですが、写真を見ていきましょう。

↑ 2018.3.28の様子です。毎年、お手入れに入らせて頂いてるツゲの木ですが、

今年は枝葉の伸長が少ない感じがしました。

(1か月前に軽く刈込み済です。)

このツゲですが、通路側に傾いた樹形と幹が全体的に空洞化しています。

このままでは、いつか倒れるのではとお客様は心配されて、伐採も考えていました。

そこで、なんとか木を残していく方法はないかとご相談を頂いたわけです。

 

↑ まづはじっくり観察。幹から枝にかけて空洞になっています。お客様は台風で枝が折れたり、倒木しないか心配しておられました。ちなみに、支柱を設置すると通路がふさがって、車が入れなくなってしまいます。

↑ 空洞は根元まで続いています。緊急性はなさそうですが、やはり注意が必要だと判断しました。

↑ よく見ると、根元のすぐ近くに不定根が出てきていました(ピンボケで申し訳ない)。この「不定根」とは、根以外の場所から二次的に発生する根のことです。このツゲの場合は洞の内側から不定根を出して、なんとか生き延びようを頑張っているのでしょう。

 

いろいろ検討した結果、この不定根を地面まで誘導し、根を定着させることで樹勢回復をする。

それに並行して、剪定により徐々に地上部を軽くして管理していく。という方針になりました。

 

ここからは、不定根誘導の作業風景を載せていきます。

ピートモスと粒状木炭を混合していきます。

 

これを、空洞内部に充填していきます。最後に遮光のシートも張ります。

最後に、幹巻きして完了となります。この状態で2年間用様子をみます。

 

不定根誘導の作業自体はこのような流れで進んでいきました。

皆様には、不定根誘導っていう技術があるんだなぁとなんとなく知って頂ければ十分です。

 

さて、樹木の樹勢回復を考える上で注意しないといけないことがあります。

それは、「樹木が元気になって枝葉の量が増えたから、木が倒れてしまうことがある」ということです。

 

まず、「樹木が元気な状態」というのは、枝葉がたくさんあって、

光合成が盛んに行われている状態で生理的な問題です。

 

それとは別に、「樹木の枝折れや倒木のリスク」というのは、強風などにより枝や幹に負荷がかかった場合、

その負荷に耐えられるかどうか物理的な問題になります。

 

ここで、地上部の枝葉がたくさんあると、強風による荷重は増えてしまいます。

 

例えば、ここに幹が同じ強度の2本の木があります。

一方は枝葉がいっぱに広がり元気な状態に見えます。

もう一方は枝葉がまったくなく不健全な状態に見えるかもしれません。

ここに大型の強い台風が来ました!さて、どちらが倒木リスクが高いでしょうか?

(幹の強度は同じですよ・・・)

 

う~ん、うまく説明できたか微妙ですが・・

「樹木の生理的な元気さ」と「樹木が倒れる物理的なリスク」は

別のものさしで考える必要があるのです。

 

なので、今回は樹勢回復と並行して、定期的な剪定により地上部を軽くしていく方針をとっています。

以下、樹勢回復の経過写真も載せていきます。

↑ さて約2年が経過して、2019.12.19のツゲの根元の写真です。2年かけて不定根が伸びてきたのがわかります。ここまできたら、シートを外します。日が当たるようになると、根は自然と地面に向かって伸びていくようになります。

 

↑ 最後に、2019.12.19ツゲ剪定中の写真です。上の方は強めに、下の方は軽めに刈り込んで

バランスをとっていきます。上が重いと風による荷重も大きくなってしまいます。

 

 

※このブログは、造園業に馴染みのない一般の方々に、造園や樹木のおもしろさをお伝えしていくことを目的としております。私が造園の仕事や日常生活で発見したこと、考えていることなどを、気軽な文章で発信していきたいと思います!そして、このブログを読んだ皆様が造園や樹木に興味を持って頂ければ幸いです。