No.9 空師・和氣邁が語る 特殊伐採の技と心

造園業者として樹木伐採の仕事をしていると、道幅が狭かったり、近くに建物があったりして、車両や重機、クレーン車等が搬入できない現場も多々あります。そんなときは、胴綱で高い木に登って、安全に伐採作業をする「空師」の技術があればいいな!と思ったりします。しかし、そもそも「空師」ってなんだ!?この素朴な疑問から私は本書を手に取りました。
前文にも書いた通り、車両が入らない!近くに建物があって枝を下ろす場所がない!!
そんな現場のときは、空師の技術がうらやましいと思うことがあります。
しかし、造園業と林業は似ているようで違うもの。
胴綱で木に登り、安全に伐採作業を行う。
いわゆる「特殊伐採」の分野ですが、私は正直よくわからないというのが本音です。
著者の和気 邁さんは特殊伐採を半世紀以上も続けられ、70歳を過ぎた今も現役です。
和気さんは日光東照宮や伊勢神宮から伐採作業を依頼されるほど信頼のある職人さんです。
この本では、そんな和気さんが特殊伐採の「技」と「心」を語ってくれています。
とはいえ、私がこの本を読んだところで、すぐに特殊伐採ができるわけではありません。
やはり、「技」の部分は長年の経験が不可欠、到底マネできるものではありません。
しかし、「心」の部分は考え方次第なので、すぐにでも取り入れたいと思うようなことばかりです。
この本で、和気さんが仕事の覚え方、とくに「マニュアル」と「見て盗む」の違いについて
語っている内容が印象的でした。
和気さんが林業に入ったとき、マニュアルや教育システムがまったく無かったそうです。
当時はそれが時代遅れに感じたそうですが、今は技術を見て盗むことのほうが大事だと語っています。
詰め込み教育だと本当の技術は身につかない、というするどい考察もさすがです!
私はお店から商品を盗んだことはありませんが、大学の先生からはたくさんのものを盗みました。
そういえば、造園実習のとき「太田くんはスポンジみたいだね」と言われたのを思い出しました。
だって、何もわからないから先生のマネをするしか方法がないんですよね。
「空師」和気さんの生き方に触れる一冊。
この本、文字数は少なめですが盗むのもはたくさんありそうです。
みなさま、最近の本屋さんは意外と高度なセキュリティで万引き対策はばっちりです。
この本はちゃんと買ってから読みましょう。
この本の紹介者: 樹木医 太田勝也