No.17 植物園で樹に登る――育成管理人の生きもの日誌
この本の著者は国立科学博物館筑波実験植物園に勤務する二階堂さん。彼はこの本を通して、植物管理や造園の仕事や、植物の不思議さと面白さを私たちに教えてくれます。
サブタイトルにもあるように、この本の内容としてはまさに育成管理人の生きもの日誌です。
著者である二階堂さんが、日本森林学会が刊行する「森林科学」で執筆していたコラムがあります。
どうやらこの本は、それをボリームアップして書籍化した本のようです。
植物園の育成管理人は、野外での力仕事や温室での植替え作業、機械のメンテナンス、
ときには自然解説員になったり、いろんな仕事をしています。
彼がどのように植物と向き合い、どんなことを考えて仕事をしているのかこの本が教えてくれます。
造園会社での修行時代の話、植物園での雑草との戦いの話、植物の生き様に関する話など、
個人的に、とても共感できる話がたくさんありました。
“ 弱っていく植物の原因を見つけられないまま対処を迫られることが多々あります。樹木を詳しく学べば解決できるというものではなく、頼りになるのは教科書的な知識よりもこれまでに培った経験です。 ”
これは、著者に限らず、樹木を管理する人なら誰もがかかえている悩みではないでしょうか。
もちろん私も「植物といういきもの」を扱う難しさを日々実感しています。
ところで、なぜタイトルが「植物園で樹に登る」なのか気になっていましたが、
その答えは実際に本を読んでみてわかりました。
著者は子どもの頃、樹の上に家をつくるという作り話にとても惹かれ、
実際に樹に登るという冒険をします。
子どもの頃に樹に登ったという体験は、著者の人生の中ではとても重要なことで、
きっとその後の造園会社や植物園での仕事に繋がっているように思えます。
この本の紹介者: 樹木医 太田勝也