☆木材の防衛線 blog number. 29
こんにちは、太田勝也です。
樹木の伐採をしていると、木材(丸太)の断面をみることができます。
忙しい作業中ではありますが、この断面に注目してみると
その樹木の生き様をちょっとだけ読み取ることができます。
本題に入る前に、基本的な知識として木材には「心材」と「辺材」があることをチラッと覚えて頂きたいと思います。
とても簡単ですが、「心材」は死んでしまった材、辺材は生きている材と覚えておけばとりあえずはOKです。
→「辺材」と「心材」:日本の木何でも講座 http://www.mpl.co.jp/post_95.php
「辺材」は生きている組織なので水分通導機能があります。
「心材」は死んだ組織なので水分通導機能はありませんが、樹体を支える機能はあります。
ちなみに、この「心材」は細胞が死んでしまうときに生成される物質により、変色することが多いです。
↑さて、この写真はシラカシの幹の断面です。
簡単に、中心から輪状に色の濃さが3段階に見分けられると思います。
外側の色が変わっていない部分が「辺材」ですね。
真ん中の濃い部分は「心材」ですが、すでに若干の腐朽が進行している部分です。
中間の薄い変色がみられる部分も「心材」といえますが、まだ腐朽は進行していません。
注目してほしいのは、各所にみられる輪状の黒い線です。
木材(丸太)の断面にはこのように黒い線がみられる場合があります。
じつはこの線、樹木が起こした防御反応の痕跡なんです!
説明しよう!
樹木は、害虫や菌類などの侵入を感知すると、フェノール類やテルペン類などの化学物質を生成する。このような化学物質を木材に蓄積させることにより、被害や感染の拡大を防ぐことができる。これが、樹木がもつ防御反応である。
ふたたび写真を見てください。円状の黒い線はたくさんみられますね。
おそらく過去に、中心部から腐朽菌の感染拡大を防いでいたであろう防衛線の痕跡です。
現在はだいぶ広がってしまい、一番外側の線でこれ以上辺材部がやられないように防いでいるところだと思われます。
おそらく、このシラカシは昆虫ではなく、感染拡大をねらう菌類と戦っていたのでしょう。
戦いといえば城攻めですね。城の場合、基本的に敵は外側から攻めてきます。
しかし樹木の場合、腐朽菌の進入を許してしまうと、彼らは「心材」を足がかりに内側から攻めてきます。
樹木は「樹皮」という第一の砦によって、外敵の進入を防いでいることは想像しやすいと思います。
ですが、一度進入を許してしまった敵にも、ちゃんと「防御反応」という第二の砦を用意しているのですね。
樹木を城に例えるのはかなり無理があるかもしれませんが、移動できない、逃げられないという点では一緒です。
進入を防ぎ、被害を最小限に抑えるという点では似てるかもしれません。
いつかあなたが一国一城の主になったとき、樹木の防御方法が参考になるかもしれません!
「自分の身は自分で守るしかない!」これは非暴力・不服従運動を行なったマハトマ・ガンジーの言葉です。
この言葉を実行している樹木たちは、なんてたくましいことでしょう。
さて、このように丸太の断面を観察する機会がありましたら、
年輪だけでなく、害虫や菌類との戦いの痕跡に思いを馳せてみてください。
最後に一句 木材や 菌類どもが 夢の跡 お後がよろしいようで(^^)